目次
はじめに
本コラムでは、株式や不動産クラウドファンディング等の複数の金融商品において利益が生じた際に発生する税金について解説します。
不動産クラウドファンディングには、一般に任意組合型・匿名組合型・賃貸型などの類型があり、税務上の取扱いはスキームによって異なります。本コラムでは匿名組合型の不動産クラウドファンディングを前提に説明します。
本コラムで記載している税制は2026年3月1日時点のものであり、今後、税制は改正される可能性があります。実際の申告・納税は、最新の国税庁情報を確認のうえ、所轄税務署または税理士にご確認ください。
また、本コラムは、個人に関する一般的な税制情報を扱ったものであり、法人の税制とは異なる場合があります。個別の税務判断・税務アドバイスを目的とするものではありません。
投資の利益は原則として課税対象
株式や債券、不動産クラウドファンディング、暗号資産(仮想通貨)といった金融商品では、配当・分配・売却益などの利益について、原則として課税されます。※1※2
株式の配当や債券の利子、匿名組合型の不動産クラウドファンディングの分配金のように、利益の支払時に源泉徴収が行われるものがある一方、暗号資産の売却益などのように、原則として投資家自身が年間の所得金額を計算し、確定申告により納税するものもあります。
ただし、税額の算定方法や確定申告の要否は金融商品や取引内容によって異なり、例えば、株式においても繰越控除等を行う場合は確定申告が必要となります。
これらの違いは、主に次の3点によって生じます。
- 利益の種類が異なるため。例. 配当、分配、売却益など
- 所得区分が異なるため。例. 配当所得、譲渡所得、雑所得など
- 税額が確定するタイミングが異なるため。例. 源泉徴収で完結する場合と、申告や住民税の計算で整理される場合など
本コラムでは、こうした違いを踏まえ、各金融商品における税制上のポイントを順に整理します。
株式(上場株式等)の税金: ポイントは「分離課税」と「損益通算」
1. 株式(上場株式等)の税金: ポイントは「分離課税」と「損益通算」
所得税の課税方法には、総合課税と分離課税があります。総合課税は、給与所得や事業所得など複数の所得を合算して税額を計算する方法です。これに対し、分離課税は、特定の所得を他の所得と分けて税額を計算する方法です。分離課税のうち、確定申告を通じて税額を計算する方法を申告分離課税といいます。
上場株式等に関する税金では、この申告分離課税の対象となるものがある一方で、総合課税を選べるものや、確定申告が不要となるものもあります。また、確定申告が必要かどうかは、特定口座の源泉徴収あり・なしなど、口座の設定によって異なります。
なお、申告分離課税を選択した場合は、一定の要件のもとで、損益通算や繰越控除の対象となります。※3 ※4
2. 損失が生じた年に関係する制度
上場株式等の譲渡で損失が生じた場合、その損失は一定の要件のもとで、配当等との損益通算や翌年以後3年間の繰越控除の対象となります。
特定口座(源泉徴収あり)に上場株式等の配当等を受け入れている場合は、同一口座内で確定申告をせずに損益通算できることがあります。一方で、損益通算しても控除しきれない損失を翌年以後3年間繰り越すには、確定申告が必要です。※4
債券(特定公社債等)の税金: 株式と共通するのは「申告分離課税」
債券は種類によって税務上の取扱いが異なりますが、本コラムでは主に特定公社債等を前提に説明します。特定公社債とは、国債や公募公社債、上場公社債等を指します。
特定公社債等の税務は、上場株式等と共通する部分があります。いずれも、申告する場合には20.315%の申告分離課税の枠組みで整理され、確定申告をしないことも選択できます。※3
もっとも、債券には株式と異なる点もあります。特定公社債等の利子等は、株式の配当のように総合課税を選択する整理ではありません。また、公社債には償還金に関する税務上の取扱いがあり、源泉分離課税となるものと、申告分離課税の対象となるものに分かれます。
不動産クラウドファンディングの税金: ポイントは「雑所得」と「源泉20.42%」
1. 雑所得としての取り扱いで生じる差
匿名組合員が営業者から受ける利益の分配は、国税庁の通達で雑所得(総合課税)として整理されています。※5
※ただし取引の実態によっては雑所得以外として扱われる場合がある旨も併記されています。
雑所得の場合、金額計算上生じた損失は、他の所得と損益通算できないものと明記されています。※6
この点は、上場株式等に係る損益通算や繰越控除の制度とは取り扱いが異なります。
なお、「他の所得と損益通算できない」とは、給与所得や事業所得など、他の所得区分との通算ができないことを指します。一方、同一年分の雑所得金額は、暗号資産取引や匿名組合型ファンドの分配金など、雑所得に区分されるものを合算して算定します。
2. 源泉徴収
匿名組合契約等に基づく利益の分配は、分配金の受け取り時に20.42%が所得税と復興特別所得税として源泉徴収されます。※2
なお、匿名組合型の不動産クラウドファンディングでは分配金に源泉徴収が行われますが、所得全体の状況や他の申告内容によっては、確定申告が必要となる場合があります。
暗号資産の税金: ポイントは「売却や交換で生じた利益の扱い」
暗号資産は、匿名組合型の不動産クラウドファンディングと同様、原則として雑所得として扱われ、他の所得との損益通算はできません。※7
一方で、暗号資産の取引による利益については、匿名組合契約に基づく不動産クラウドファンディング等の利益の分配のような20.42%の源泉徴収は行われず、所得金額や他の申告内容によっては、確定申告が必要となる場合があります。
また、暗号資産の売却だけでなく、暗号資産同士の交換により利益が生じた場合も、所得税の計算対象となります。

利益10万円のケースにおける税額の見え方の違い
次に、それぞれの金融商品について、10万円の利益が生じた場合の税額の見え方を比較し、税制の違いを具体例に沿って整理します。
1. 株式(上場株式等の配当等)の場合
上場株式等の配当等では、20.315%が、所得税および復興特別所得税15.315%と住民税5%を合わせた税率として示されます。
この前提で配当等を10万円受領した場合、受取時に差し引かれる金額は20,315円、手取り額は79,685円となります。
2. 債券(特定公社債等の利子等)の場合
特定公社債等の利子等についても、受取時には15.315%の所得税および復興特別所得税に加え、住民税5%が課され、合計20.315%の税率で整理されます。
この前提で利子を10万円受け取った場合、受取時に差し引かれる金額は20,315円、手取り額は79,685円となります。
3. 不動産クラウドファンディング(匿名組合型)の場合
匿名組合型の不動産クラウドファンディングにおける利益の分配は、20.42%が所得税および復興特別所得税の源泉徴収税率として示されます。
この前提で分配金を10万円受け取ると、受取時に差し引かれる金額は20,420円、手取り額は79,580円となります。
なお、住民税は20.42%に含まれないため、受領時点で差し引かれた金額だけでは、住民税を含む税額は確定しません。
4. 暗号資産の場合
暗号資産は、株式の配当や債券の利子、不動産クラウドファンディングの分配金のように、受取時の源泉徴収を前提として手取り額を示すことができる類型ではありません。
暗号資産取引による利益は、原則として雑所得に区分され、売却や交換により生じた利益を年間の所得計算の中で整理することになります。
そのため、利益が10万円生じた場合でも、その時点で一律に「差し引かれる税額」や「手取り額」を示すことはできません。

以上を比較すると、株式、債券、不動産クラウドファンディングは、受取時点で差し引かれる金額を比較しやすい一方、暗号資産は、年間の所得計算や確定申告を前提に税額を把握する性質が強いといえます。
また、株式と債券の20.315%には住民税5%が含まれていますが、匿名組合型の不動産クラウドファンディングの20.42%は所得税および復興特別所得税であり、同じ20%台でも税目の内訳は異なります。
雑所得の制約と、総合課税で変わる税率の見え方
税制上、株式や債券では、配当等や利子等について20.315%の申告分離課税で整理されます。一方、匿名組合型の不動産クラウドファンディングの分配金や、一般的な個人投資の前提における暗号資産取引による利益は、原則として雑所得として整理され、損失は他の所得と損益通算ができません。
もっとも、匿名組合型の分配金や暗号資産取引による利益は、それだけで直ちに税負担上不利とはいえません。これらは総合課税の対象であるため、最終的な税負担は一律ではなく、その年の課税所得の水準によって、株式や債券の配当等・利子等に係る20.315%を下回る場合もあるため、税率表示だけで有利・不利を判断することはできません。
このため、雑所得であることが直ちに税負担の不利を意味するわけではなく、実際の税負担は、投資家の所得状況や確定申告の要否によって異なります。
まとめ
本記事では、株式、債券、不動産クラウドファンディング、暗号資産といった金融商品について、適用される税率の表示だけでなく、所得区分、源泉徴収の有無、確定申告との関係など、税制上の共通点と相違点を整理しました。
株式や債券では、配当等や利子等について20.315%の申告分離課税で整理される場面が多い一方、匿名組合型の不動産クラウドファンディングの分配金や、一般的な個人投資の前提における暗号資産取引による利益は、原則として雑所得として扱われます。
また、株式や債券は、損益通算や繰越控除などの制度が用意されている一方で、雑所得として扱われる匿名組合型の不動産クラウドファンディングや暗号資産では、損失を他の所得と損益通算することはできません。
ただし、雑所得であることが直ちに税負担上の不利を意味するわけではありません。総合課税のもとでは、最終的な税負担は課税所得の水準によって変わるため、一律の税率で示される金融商品より低くなる場合もあれば、高くなる場合もあります。
このため、受取時点の手取り額や表示される税率だけで税負担を判断するのではなく、所得区分、源泉徴収の仕組み、損益通算の可否、確定申告の要否まで含めて捉えることが重要です。
本記事が、株式、債券、不動産クラウドファンディング、暗号資産の違いを、税率表示の数字だけにとらわれず整理する一助となれば幸いです。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供であり、特定の商品・事業者の勧誘、または個別の税務アドバイスを目的とするものではありません。
- 税務上の取扱いは、契約形態、分配の設計、投資家の所得状況、控除、自治体の取扱い等により異なります。
- 実際の申告・納税は、最新の国税庁情報を確認のうえ、所轄税務署または税理士に確認してください。
参考文献
※1: 国税庁「株式・配当・利子と税」
URL: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_5.htm
※2: 国税庁「令和8年版源泉徴収のあらまし」
URL: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2026/pdf/08.pdf
※3: 国税庁タックスアンサーNo.1331「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
※4: 国税庁タックスアンサーNo.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
※5: 国税庁タックスアンサーNo.1000「所得税のしくみ」
URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm
※6: 国税庁タックスアンサーNo.1500「雑所得」
URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
※7: 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」
URL: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf