不特法の改正
投資家保護を目的に事業者の健全な業務運営を促すために、不特法が成立しましたが、その後、不動産の証券化の促進を目的として、複数回の法改正を経て、不特法の新規案件数は増加傾向にあり、現在に至っています。不特法の主な改正について解説していきます。

- 2001年改正
法令が成立した当初、不動産小口化商品は1口1億円単位でしたが、1999年に投資家の最低出資単位は500万円まで引き下げらました。その後、不動産証券化市場の活性化を目的に2001年には、ガイドラインの一部が改正され、最低出征制限が撤廃されました。同時に投資家保護の観点から契約成立前における説明義務等は拡充されました。現在では、1口1万円~数十万円単位で投資が可能となっており、事業者によって最低投資単位が異なっています。
- 2013年改正
不特法が施行されて以降、不特法に基づく商品は2013年度までで約2.2兆円組成されたものの、不特法事業者の他の事業から倒産隔離されておらず、不特法事業者自身の信用に基づくスキーム(1号・2号事業)で大企業等の信用力が高い事業者に参入が限定されていました。また、不動産の収益に着目して投資する投資家は投資実行を避ける傾向があり、制度の利活用が十分に進みませんでした。国土交通省は、こうした課題に対して、老朽化不動産の再生等の促進を目的として、一定の要件を満たす特別目的会社(SPC)を特例事業者とし、倒産隔離を可能とするスキームを創設しました。加えて、これまで不特法事業は許可を受けなければ行うことができませんでしたが、SPCについては、不特法事業を届出することで実施可能となりました。
図:改正案のイメージ

- 2017年改正
2013年の改正で特例事業者を届出制にしたものの、特例事業者から委託を受ける不特法3号事業者の許可要件は厳しく、利活用が進まなかったことが課題となりました。加えて、投資家についても特例事業に投資できる投資家は特例投資家(銀行、信託会社その他不動産に対する投資に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として不動産特定共同事業法施行規則で定める者並びに資本金の額が5億円以上の株式会社)に限定されており、一般投資家は投資できませんでした。こうした課題に対応するために、2017年に法改正が実施されています。
2017年の主な改正ポイントは①小規模不動産特定共同事業制度の新設②クラウドファンディングに対応した法整備③特例事業の投資家範囲の拡大④適格特例投資家限定事業の創設です。
①小規模不動産特定共同事業制度の新設
第1号事業者および第3号事業者のうち出資総額が一定規模以下の事業を「小規模不動産特定共同事業」と定義し、制度を新設しました。本制度では、事業者の資本金要件が緩和されつつ、5年間の登録更新制とする等、投資家保護にも配慮した制度となっています。本制度によって、不特法事業への参入障壁が下がりました。
②クラウドファンディングに対応した法整備
クラウドファンディング等のインターネット上の募集に対応するために、契約締結前交付書面等の書面について、改正前は書面を送付する必要がありましたが、インターネット上での手続きに関する規定を整備し、電子データ等による提供が可能となりました。
③特例事業の投資家範囲の拡大
特例事業については、一定額以上の宅地造成や建物の新築等を行う場合以外であれば、一般投資家の参加が可能となり、事業参加できる投資家の範囲が拡大しました。
④適格特例投資家限定事業
適格機関投資家とは、特例投資家のうち不動産に対する投資に係る専門的知識及び経験を特に有すると認められる者として主務省令で定める者をいいます。適格特例投資家限定事業とは、投資家を適格特例投資家に限定する事業で倒産隔離が可能であり、届出のみで業務が開始可能な制度です。
本制度では、契約締結前交付書面の交付義務等の規程が免除されており、柔軟な制度設計が可能となっています。
【背景・必要性】(※1)
● 空き家・空き店舗等が全国で増加する一方で、志ある資金を活用して不動産ストックを再生し、地方創生につなげる取り組みが拡大しているが、不動産特定共同事業(※2)に該当する場合には、許可要件が地方の事業者にとってはハードルが高く、見直しが必要。
※2 組合形式で出資を行い、不動産の売買や賃貸による収益を投資家に配当する事業。
● 地方創生に資する事業での資金調達方法として、クラウドファンディングの活用が広がる中、不動産特定共同事業では書面での取引しか想定しておらず、電子化への対応が必要。
● 観光等の成長分野を中心に質の高い不動産ストックの形成を促進するため、不動産特定共同事業制度の規制の見直しが必要。
※1 平成29年3月3日付国土交通省報道発表資料「「不動産特定共同事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定~空き家・空き店舗等の再生による地方創生を推進します!~」より抜粋
- 2019年改正
2019年の改正では、電子取引業務の適正な運営の確保と投資家の利益の保護を図ることを目的に「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」が整備されました。加えて、対象不動産変更型契約や不特法への新設法人の参入についても改正されましたが、本稿では、ガイドラインに焦点を当てて解説します。
電子取引業務ガイドラインでは、主に①電子情報処理組織の管理②適切な審査③クーリング・オフ④定期的な情報提供⑤重要事項の閲覧⑥分別管理の徹底及び金銭の預託について明確化され、各事業者は事業運営にあたり、ガイドラインに沿った対応を求められています。
①電子情報処理組織の管理
電子情報処理組織の管理とは、いわゆるシステム管理であり、不特法事業者は、基本方針を策定・公表し、体制整備を行ったうえで、システム障害や顧客の財産への被害防止に必要な措置を講じる必要があります。
②適切な審査
人的構成・審査の独立性の確保、審査に係る社内規則及び社内マニュアルの整備及び遵守の確認、審査の実施、審査項目等について具体的な基準が定められており、基準に沿った対応が必要となります。
③クーリング・オフ
クーリング・オフ期間の起算日となる日付を特定し、契約成立前書面及び契約成立時書面に適切かつ明確に記載し、かつホームページ等を用いて表示します。
④定期的な情報提供
不特法事業者は、投資家に対して、財産管理報告書を用いて定期的な情報提供する体制を確保する必要があります。
⑤重要事項の閲覧
不特法事業者の名称や財務情報、不動産に関する情報等の事業参加者の投資判断に重要な影響を与える事項について、ホームページ等の閲覧者にとって見やすい箇所に明瞭かつ正確に表示する必要があります。
⑥分別管理の徹底及び金銭の預託
事業参加者から預託を受けた金銭については不特法事業者の財産と分別管理する必要があります。また、金銭の預託について、預託を受ける金銭の範囲等、一定の事項について定めています。

おわりに
国土交通省は、2025年8月に「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての中間整理」を公表しています。不特法の改正等の影響で不動産の流動化市場は拡大したといえるものの、一般投資家を含む投資家が商品やリスクをより理解することが重要であることから、不特法事業者に対して、一層の情報開示を求める可能性があります。今後、情報開示等に関する法令等が改正される可能性があると思料されるため、法令改正や業界団体等からの発信があった場合、内容を確認し、投資する会社が法令や自主規制等を遵守しているか判断していくことが重要だと考えています。

▼前編の記事も併せてご覧ください。