不動産クラウドファンディング市場は、近年事業者も増加し市場が急拡大しています。
本コラムでは、同市場の成長の要因や特徴、今後の成長可能性について解説します。
目次
国内不動産市場の動向
不動産クラウドファンディング市場の成長要因のひとつとして、国内不動産市場の着実な成長が挙げられます。
国土交通省が毎年公表している「国土交通白書2025年版」によると、国内の不動産の資産額は2023年末時点で約3,137兆円となっています(※1)。
2022年末時点では約3,055兆円と算出されており、1年で約80兆円増加していることがわかります。
※1: 内閣府「国民経済計算」をもとに建物、構築物及び土地の資産額を合計することで算出。
不動産は主に土地と建物に分けられますが、2026年3月(2026年1月1日時点を基準)に公表された地価公示によると、土地の価格は全国で全用途平均・住宅地・商業地いずれも5年連続で上昇しています。2026年の上昇率は前年比2.8%であり、2025年の2.3%の上昇率に対して、さらに拡大しています。
建物の価格についても、2025年までの住宅価格は概ね上昇傾向が続いています。

出典: 国土交通省「不動産価格指数(2026年1月30日付)」より、毎年12月の値をもとに当社にて作成。https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001979235.pdf
不動産ファンド市場について
本コラムでは、不動産ファンド市場の中で、「REIT(リート)」および「不動産クラウドファンディング」を中心に解説します。
1. REIT(リート)とは?
REITとは、Real Estate Investment Trusts のことで、頭文字をとって一般的にREIT(リート)と呼ばれており「不動産投資信託」を意味します。投資家から資金を集めてマンションやオフィスビル、ホテル等の不動産に投資し、その賃料や売却益を分配する仕組みです。
REITが誕生したのは1960年に米国で「不動産投資信託法」が成立したことから始まります。その後、ヨーロッパやオセアニア等にも広がり、現在は40か国以上で展開していると言われています。
日本で「REIT」とは、主に「J-REIT」と私募REITがありますが、ここでは一般的に認知されている「J-REIT」について解説します。
日本では、2000 年11月に投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)が改正され、主として有価証券とされていた投資信託の運用対象に、新たに不動産等が加わり「不動産投資信託」の組成が可能となりました。2001年3月に東京証券取引所がJ-REIT市場を開設し、同年9月に初のJ-REITとして2つの投資法人が株式上場をし、日本におけるJ-REITの取引が開始されました。
2001年9月から始まったJ-REIT市場は当初時価総額2,600億円程度でしたが、新規上場のほか、借入や投資法人債の発行等により規模を拡大し、近年の市場規模は16兆円程度と言われています。
2. 不動産クラウドファンディングとは?
不動産クラウドファンディングとは、2017年の不動産共同特定事業法(以下、不特法)の法改正によりスタートした市場で開始から10年経過しておらず、比較的新しい不動産投資のスキームと言えます。取引方法は、インターネットを通じて複数の投資家から資金を集め、その資金をもとに事業会社等が不動産を購入・運用し、得られた家賃収入や売却益を分配する仕組みで、投資金額を1口1万円からと少額からスタートでき、手続きがオンラインで完結するという特徴があります。
不動産クラウドファンディングの歴史は、1995年に不特法が施行されたことに起因します。当時、バブルによる地価高騰や不動産価格の上昇により、不動産を1口1億円単位等、複数人で保有する不動産小口化商品のニーズが高まっていました。しかし、バブル崩壊により、事業者の破綻や投資家の元本毀損等が増加する等、様々な問題が発生しました。こうした問題に対して、投資家保護や事業者の健全な運営体制の整備等を目的として、1995年に不特法が施行されました。
その後も2001年、2013年と法改正が行われ、2017年の法改正時にクラウドファンディングに対応した法整備がなされ「不動産クラウドファンディング」のスキームが誕生しました。
不動産特定共同事業における不動産クラウドファンディングの市場規模は、直近の数年間で10倍以上に急拡大しています。2018年は26件、総額12.7億円であったのに対し、2024年には875件、総額1763.4億円に達しています。

出典: 国土交通省「不動産特定共同事業の利活用促進ハンドブック 令和7年7月」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001519666.pdf
3. J-REITと不動産クラウドファンディングの特徴
J-REITと不動産クラウドファンディングはともに、不動産へ少額から投資できる不動産ファンドと言えますが、それ以外については異なる点が多くあります。
J-REITは金融市場に上場しているため流動性が高く、分配金に加えて、価格変動による損益を享受することが可能です。
一方で、不動産クラウドファンディングは、原則運用期間中の解約不可という制限があるものの、金融市場に左右されず、比較的高い利回りを分配している傾向があります。

不動産ファンド市場の成長
不動産クラウドファンディングを含む不動産特定共同事業、REIT、私募ファンドなど、多様化する不動産の証券化スキームの市場規模や運用状況をまとめた「不動産証券化の実態調査」によれば、2024年度末時点(※2)において、不動産証券化の対象となった不動産又は信託受益権の資産総額は約66.6兆円で、2015年から2024年までの10年間で約2倍に拡大しています。
※2: その他私募ファンド(TMK、GK-TKスキーム)については2024年12月末時点

出典: 国土交通省「令和6年度 不動産証券化の実態調査」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001751761.pdf
また、2024年度に証券化の対象となった不動産資産をスキーム別に見た場合は、取得では不動産クラウドファンディングを含む不動産特定共同事業が約0.7兆円、REITが約2.1兆円でした。譲渡された資産は、不動産特定共同事業が約0.3兆円、REITが約0.8兆円でした。
直近20年の推移をみるとREITが大半を占めていますが、不動産クラウドファンディングを含む不動産特定共同事業において取得された証券化対象不動産は、2022年の約0.3兆円、2023年の約0.4兆円から、2024年度には約0.7兆円へと増加しており、着実な拡大傾向がみられます。


出典: 国土交通省「令和6年度 不動産証券化の実態調査」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001751761.pdf
不動産クラウドファンディング市場の急成長
不動産特定共同事業において、新規案件数に占める不動産クラウドファンディングの割合も急増しています。2018年には全160件中16%にあたる26件でしたが、2023年には701件中530件が不動産クラウドファンディングとなっています。
不動産特定共同事業への投資家数も着実に伸びており、2017年に2.5万人でしたが、2023年には約30万人となりました。そのうち不動産クラウドファンディングは約20万人と約7割を占めており、個人投資家層からの強い関心と資金流入が市場を牽引していることが推測されます。



出典: 国土交通省「不動産特定共同事業の現状について 令和7年4月」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001885601.pdf
不動産特定共同事業の推進
不動産クラウドファンディングを含む不動産共同特定事業市場の成長の背景には、国土交通省による法整備・法改正や取り組みが起因しています。
国土交通省が1995年に制定した不特法は、複数の投資家から出資を募って不動産を売買・賃貸等し、その収益を分配する事業について定めた法律で、不動産クラウドファンディングだけでなく、不動産小口化商品も対象となる法律です。
投資家から出資を募り不動産の売買や賃貸等を行い、その収益を分配する事業を行う事業者について、許可等の制度を創設し、業務の適正な運営の確保と投資家の利益の保護を図ることを目的としています。
2013年の法改正により、倒産隔離型スキーム(特例事業)が導入され、さらに2017年の法改正により、小規模不動産特定共同事業を創設するとともに、クラウドファンディングに対応した法整備が実施されました。
2017年の法改正後も、国土交通省は不動産特定共同事業の普及促進に向けて「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック」の作成や更新、セミナーやウェビナー等も実施しており、民間の資金・アイデアを活用した老朽・遊休不動産の再生の推進に向けた取組みを後押ししています。
また、直近では不動産クラウドファンディング業界全体における事業者の運営や情報開示の有り方等について、指針等を検討すべく議論が進められています。
今後の展望と課題
不動産クラウドファンディング市場は、国内の不動産市場の着実な成長や個人投資家の流入増が見込まれ、今後も成長が期待されています。
一方で、多くの事業者の参入が進む中、投資家に対する情報開示や不動産取引の公正性などに関する議論が国土交通省を中心に実施されています。
国土交通省から新たな指針等が提示され、不動産クラウドファンディング事業者の情報開示や運営体制が是正されることで、不動産クラウドファンディング市場全体の透明性や成長性に繋がり、投資家の方の投資判断に役立つことが期待されます。